男子日本代表も健闘した、サッカーワールドカップ2022が終了した。
その中で、圧倒的なスピードと得点能力で存在感を出していたのが、フランス代表のキリアン・エムバペ選手だ。
サッカーの話も大好きだがここではおいておこう。今回も英語関連の話になる。
自分は今アメリカで生活していて、アメリカ人はもちろん、アフリカ・インド・中国・スペイン系など、多様な発音に触れていて、発音に敏感だ。
パキスタン出身の人が研究室にいるのだが、その人の発音に毎日耳をアジャストするのに数分かかる笑
海外にいると勝手に英語力が伸びていくと思われがちだが、実は家に帰って、単語は知ってるけど実際どうやって発音するのかわからない単語などを調べては吸収して、ネイティブ相手に試してたり、ネイティブが使ってた表現を別の人に使ってみたりの繰り返しで伸びていっている気がする。
ところで、
学校ではちゃんと教えてくれない英語の発音をYouTubeや洋ドラマで後天的に学んだ自称発音マニアとして、どうしても気になってしまうのが、日本のアナウンサーたちの「エムバペ」の発音だ。
エムバペを、ローマ字表記で言うとすればemubapeと発音している。
アナウンサーたちは、一音一音はっきりと発声するトレーニングを積んでいると思うから、彼らは何も悪くないのだが、海外の実況などをたまに聞いているサッカーファンかつ発音マニアの僕からすると、違和感が凄い。
原因はmuの部分だ。「ム」とカタカナで書いているからそのまま読んでいるのだろうが、実はエムバペの綴りはMbappéで、mのあとにuの文字がない、すなわち母音がない。
templeとかsimpleのmのように、唇を合わせるだけのmの発音だ。simpleのことを「シムプル」と発音しないように、Mbappéも「エムバペ」と発音してしまうと違和感がある。
サッカーファンならおなじみだと思うが、エムバペは実は「ムバッペ」や「エンバペ」と表記されていることもある。
「ムバッペ」は、「エムバペ」と同じ理由でムをmuと発音しちゃうし、
「エンバペ」だと、気をつけないと今度はnの発音(例:endのn)が出てきてしまう。
mをnで発音したとしても、次のbの音を出す直前で唇が閉じられてmの形になるから、そういう意味ではぎりぎり「エンバペ」が近いかもしれない。
要するに何が言いたいかと言うと、外国語には、カタカナで表現できない音があるということだ。
そして、日本語にはほぼすべての音に母音がある(※例外は後述)。
母音は声帯の振動をともなって音を出す「有声音」に分類される。
日本語はほとんどの音が子音+母音でセットの1つの音になっており、有声音だ。
しかし英語などの外国語では、声帯が振動しない「無声音」が存在する。
catのtなど目に見えて母音がないものもあるし、riceのceなどのように表記上では母音があるように見えるが発音上は母音を発音しないものもある。
本当か?と思う人は、喉に手を当ててriceを発音した時に、iのところでは喉が震えるが、eのところでは震えないのを感じ取ってみてほしい。
これが有声音と無声音の違いだ。
Mbappéを「エムバペ(emubape)」と読むとおかしく感じるのも、mも無声音だからなのではないかと初めは思った。
しかし、詳しい人はお気づきかもしれない。
実は子音のmは有声音だ。
mを発音するときは喉が震える。
さらに調べたところ、バ行・パ行・マ行の前のmは有声音のなかでも「鼻音」と呼ばれる音に属すことがわかった。(参考:【ん!の発音3種類】3つの鼻音[m] [n] [ŋ]!! - ネイティブキャンプ英会話ブログ)
やはりsimpleと同じように、唇を閉じたまま「ン」と発音するようだ。なので「ム(mu)」とは違う。
また、上の参考URLにあるように、nともŋとも異なる「ン」なので、そこも注意したい。
日本人でも、「新橋」のように、バ行の前は鼻音のmになっているということで、Mbappéを表記するとすれば「エンバペ」がいいのではないかと思う。
リアルなやつも聞いてみよう。
How to Pronounce Kylian Mbappé - YouTube
↑この発音を聞いても、「エ」なんか言ってるか?って思うので、個人的には「ンバペ」だと思う(笑)
これを認めてしまうと、しりとりで「ン」がついても継続できてしまうが(笑)「ンジャメナ」って地名もあったかな。
「ン」で始めるとしりとりで鍛えられた日本人は混乱するので、カタカナ表記ではエから始めてるのではないかと推測している。
【日本語の無声音の話】
さて、先ほど、日本語はほぼすべての音が有声音だと言った。
しかし、母音のi, uが無声子音に挟まれたときや、文の最後に来たときは、i, uの声帯の振動がなくなって、母音が聞こえにくくなることがあるらしい。(参考:東外大言語モジュール|日本語|発音|実践編| 3 ネイティブ並の発音を身につけるために 3.3.1 無声化母音の産出)
わかりやすい例だと思うのは、「~です」と言うとき、多くの人がdesuではなくdesと発音している。
しかし、日本人のなかでもたまにdesuと発音する人がいて、勝間和代さんのYouTubeの冒頭の「勝間和代です」の「です」はdesuになっている。
desを聞き慣れている人にとっては、desuを聞くと小さい「ぅ」が語尾についているようでついていないような変な感じがして、違和感を感じる人も多いと思う。
学部時代、とある同期が研究発表するときの語尾にずっと違和感を感じていたのだが、ついにその違和感の正体がわかった。
このように、英語の発音を勉強したおかげで日本語の発音を客観的に見ることが多くなり、日本語の発音も深く知ることができるようになってきた。
これも外国語を勉強する一つの面白さかもしれない。
ではまた!