オオブログ!

答えのないことを考えるのが好きな大学院生のブログ。

素人によるM-1分析②「システムの台頭」

こんにちは。

 

今日も前回に引き続き、ウエストランド井口がいらないといっていた、素人によるM-1の分析をやっていきたいと思う。

前回の記事→素人によるM-1分析①「決勝進出3回目以降で優勝する難しさ」 - オオブログ!

 

今回は「システム」について。

 

なぜこれを取り上げたかと言うと、掴み・ボケとツッコミの精度・間・声の抑揚といった、単純な「漫才の上手さ」だけでは勝てない時代に突入していると思うからだ。

 

それらを数値化するものがないからどうしてもイメージの話になってしまって、ふだん研究をしている者として心苦しいが、

2018年、霜降り明星が優勝したあたりからだろうか。単純な話芸の技量だけではもう勝つのは難しく、きちんと雰囲気にハマり、大会の象徴にまでのし上がらないと優勝できない。

 

そこで個人的に目立っている気がするのが、「システム」だ。

 

システムを完璧に定義するのは難しいが、

優勝した組で言えば、ミルクボーイの行ったり来たりする漫才や、ウエストランドのあるなしクイズ、霜降り明星大喜利のようなツッコミ、

優勝していない組で言えば、ジャルジャルの国名わけっこ、東京ホテイソン縦読み、ぺこぱの否定しないツッコミなど、

ひとボケ、ひとくだり終わるごとに帰ってくる場所のある漫才だ。

 

広義には、マヂカルラブリーや錦鯉の、動きのあるボケに、ツッコミが延々とツッコみ続けるあの漫才も、システムと呼べそうだ。

 

この「システム」を導入することのメリットとして、以下の3つが挙げられると思う。

 

1つ目のメリットは、状況の説明に時間をかけなくていいことだ。

 

漫才はコントと違い、大道具をがっつり使うわけではないから、漫才の舞台となっている現場を、状況ごとに説明しないといけない。

 

例えばウエストランドのあるなしクイズのように、最初の一回だけ何をするか説明しておいて、後はずっとそれを軸に漫才をし続けることができる。

 

客は無駄に情景を想像する必要がなく、置いてけぼりになりにくい。

 

そして、状況の説明のぶんの時間を他の笑いに費やすことができる。

 

ただし、状況を限定してしまうことで単調になる可能性は大いにあるので、限定されたなかで面白くできるのは各組の手腕があってのことだというのは言うまでもない。

 

2つ目のメリットは、客が自分たちの笑うべきタイミングを予測できることだ。

 

もちろん誰でもいつでも笑っていいのだが、芸人なら狙って笑わせにいっている場所が必ずある。

 

そこできちんと多くの客を笑わせることができれば、ウケの量が大きくなる。

 

霜降り明星粗品のツッコミ、ミルクボーイ内海のツッコミは、「来るってわかっててそれを超えてくる」から客もつい笑ってしまうのだと思う。

 

従来主流だった王道のしゃべくり漫才では、この笑うタイミングが断続的に出てくるから、じわじわと笑えても、客が一斉にドカーン笑うような笑いが起きづらかった。

 

3つ目は、1回目と2回目(最終決戦)で同じシステムを使えることだ。

 

1回目で高得点を取れた場合、客も審査員も「まだあれを聞きたい」となっていると推測できる。僕が客だったらそう思う。

 

そこで、確固たるシステムを作っていないコンビは、1回目と全く違うネタを披露する。

 

上手くはまる場合もあれば、「1回目のほうがよかった」となる場合もあるだろう。

 

しかし、システムを作っておけば、システムを見せた時点で、一定の期待に応えることは担保される。

そしてシステムは同じままで、中身を変えることで、新鮮さをキープすることができる。

 

2回同じことをすることは飽きられるリスクがあると捉えられるかもしれない。

しかし、彼らは同じ「システム」をもう一度やっただけで、同じ題材をもう一度やっているわけではないのだ。

 

つまり、客の「まだあれを聞きたい」と「新鮮さ」の両取りができるのである。

 

以上3点が、システムを取り入れることのメリットだと考える。

 

2023年以降もシステムを持った組が優勝するのかしないのか。

 

今後もM-1から目が離せない。

 

いや、どんだけ好きやねん。

 

ではまた!

 

P.S.

真空ジェシカも、基本的にツッコミが、ボケの意味を説明しつつそのワードで笑わせる大喜利ツッコミだ。これは霜降り明星と同じである。

しかし、明らかに違う点は、ツッコミの強さだ。

粗品が体言止めのような一言でビシッと終わらせるのに対し、ガクは「○○だ~」みたいなフワッとしたツッコミをする。

ツッコミがまだ続くのか続かないのかわからないので、ボケの川北のほうに視線を向けていいのかわからない。

プレゼンと同じで、ボケのときはボケ、ツッコミのときはツッコミというように、見るべき場所に視線誘導することが大事なのだ。

これは上記の2つ目のメリットに挙げた、「来るとわかっててそれを超えてくる」笑いに通ずる。

 

他のバラエティーで見せている真空ジェシカのセンスはめちゃくちゃ好きだからこそ、M-1という舞台でも輝いてほしいと、ド素人ながら意見を書かせてもらった。