オオブログ!

答えのないことを考えるのが好きな大学院生のブログ。

とある農学系大学院生が1年で読んだ24冊の本【2021年版】

 

はじめに「僕の2021年の読書法」

こんにちは。

 

2021年、自分の実力を知らずに年間50冊の本を読むことを目標にしていましたが、到底及びませんでした(笑)

 

しかし、目標を高くしていたおかげで、意識して本を読むようになり、24冊(約2週に1冊)の本を読むことができました。

 

目標に到達できなかった理由は2つあると思います。

1つは、読んだことを人に説明できるようにしたくて、随時メモを取ったりしていたことです。

これまでは、読んで印象的だったことでも、すぐに忘れてしまい、「印象的だった」印象しか残っておらず、人に説明できるレベルには達していませんでした。

 

それでは読書で学んだ意味がないなと、どうせ読むなら、得た知識を今後の人生に生かしたいなと思ったので、Google documentにメモを取ることにしました。

 

その結果、より内容が頭に残っているし、そのメモを見ればだいたい思い出すことができますが、今までより読むペースは遅くなってしまいました(笑)

 

もう1つは、難しい本にチャレンジし始めたということです。

「○○のやり方」、「できる人は○○をしている」、といった具合のタイトルに代表される、いわゆる「自己啓発本」もこれまでは読んできたのですが、だいたいの自己啓発本の内容は似てきていると感じたし、YouTubeでの解説も多くなってきたので、あまり読まなくなりました。

 

それよりも、興味がある分野の新書を主に読むことで、その分野の最先端のことや歴史について学ぶことを意識しました。

 

特に、研究者の方が書いた本は、文章の根拠が出版物ベースとなっていることが多いので、ふだん研究でそうやって論理を組み立てていく大学院生の自分としては、納得しやすいものでした。

 

ビジネス本では、ビジネスで成功した人の主観やフィーリングに頼った根拠で文章が進められていくことがあるので、ついていけないんですよね、、、

 

そうこうしているうちに難しい本を読むようになって、ペースも遅くなってしまいました。

 

前置きが長くなってしまいましたね。

それでは、本を紹介していきます。

 

この1年で読んだ24冊の本

自分の満足度を、5段階評価で星で表すことにします。

「☆☆☆★★」これは星3つという意味です。

 

※書評は氷山の一角ではありますが、ネタバレになるかもしれません。ご承知おきください。

 

農業・環境編

「ウンコはどこから来て、どこへ行くのか—人糞地理学ことはじめ」湯澤規子

満足度☆☆☆★★

 

【書評】食べるのと同じくらい、生きていることを表すと言っても過言ではない「ウンコ」。ウンコはかつて肥料としても使用され、人→土→作物→人の循環において、欠かせない存在だったが、都市一極集中化・工業化していく過程で、自分事から他人事になり、処理に困る要らないもの「汚物」のイメージがついていった。しかし、今後サステイナブルな生活を追い求めていくうえで、この栄養分のかたまりであるウンコから目を背けず、適切な方法で地球に返す必要があると感じた。

 

「土と内臓」デイビッド・モントゴメリー アン・ビクレー

満足度☆☆☆★★ 

【書評】我々の目に見えない領域で自然の大部分を構成しているのは微生物である。歴史的に、疫病などを媒介する微生物の悪い面が先に有名となり、我々は抗生物質や農薬などでそれを抑え込むことを目指したが、結果的にアレルギーの増加や肥沃度の低下を招いてしまった。微生物の役割を理解し、彼らが良い働きをする環境を整えられれば、土も内臓も健康に保てるだろう。けっこう長くて読み応えがある。

 

ロハスの思考」福岡伸一

満足度☆☆☆★★

【書評】地球環境および個人の生体は、動的平衡(循環によるバランスの維持)によって保たれている。ファストな生活様式はそういった平衡を歪め、その歪みの揺り戻しが環境問題などとして降りかかっている。筆者はロハス=Lifestyles of Health and Sustainabilityを掲げ、自分の幸福のために食べるものは環境のどの部分に負担をかけて作られているのか、など思考を巡らせ、環境や自分の体の平衡を歪まさない生活を進めていくといった考え方がまとめられている。どうしても主観が入りそうなテーマだが、「生物と無生物のあいだ」の著者で生物学者福岡伸一さんが、世界の研究や報告ベースで展開する論理は面白かった。

 

「脳と森から学ぶ日本の未来 共生進化を考える」稲本正

満足度☆☆☆☆★

【書評】地球の歴史上、持続的に繫栄した文明はどのようなものであったかを、進化や宇宙の理論まで用いて展開する壮大なストーリー。ほかの生物を圧倒した恐竜は絶滅したが、お互いに助け合ってきた昆虫と植物は持続的に栄えることができたのはなぜか?これらをふまえ、人類が今後持続的に発展するための道しるべを考えていっている。絶対的な事実というよりは、事実を組み合わせて考察した筆者の「考え方」に近いと思うのでそこは注意。これもかなり長くて読み応えがある一冊。

 

科学編

「文化がヒトを進化させた」ジョセフ・ヘンリック

満足度☆☆☆☆☆

【書評】形質が環境に適応したものだけが生き残るとするこれまでの進化論とは異なり、ヒトの進化においては文化的学習能力の進化が重要な役割を担っているという、興味深い話。文化のなかには、個体自身には短期的には利益にならないものも含まれているが、社会規範によって恥の意識や違反者を罰する行為が進化し、文化を守らせることで、長期的な繁栄を築いてきた個体たちが生き残っている。「香辛料は辛いから個体にとってメリットはない」が、親や周りの人が食べているから食べる、そういった「文化を守れること」自体が、無意識に腐った食べ物を食べないといった生存戦略につながっていったことなど、具体例を交えた研究結果で示してくれるのがとてもよかった。

 

「16歳からの相対性理論 アインシュタインに挑む夏休み」佐宮圭

満足度☆☆☆☆★

【書評】相対性理論を、「相対性理論」という言葉を使わずに、16歳の少年の成長とともにいつの間にか説明している小説。数式はほとんど出てこず、僕のような物理学から離れてしまった人でも、理解できる(たぶん)。聞いたことはあるけど意味は知らない相対性理論は、実は我々が使うGPSなどにも使われている。この宇宙に生まれたなら、宇宙の根幹を支えるこの理論の概要をどうせなら知っておきたいという人におすすめ。

 

「生命とは何か 物理的にみた生細胞」シュレーディンガー

満足度☆☆☆☆★

【書評】「なぜ原子は小さいのか」という疑問は、なぜ我々の体は原子よりも圧倒的に大きい必要があったかと読みかえられる。前半はこの疑問を、原子の運動の無秩序さをヒントに考える。後半では、体の設計図である遺伝子が驚くほど少数の原子によって構成されていることに着目し、生命の進化について考えている。生物学・化学・物理学の基礎知識がないとこの本はかなり難しいと思うが、ワトソンとクリックがDNAが遺伝子であることを示す前に、物理学者のシュレーディンガーが物理で生命の謎を解き明かそうとした、示唆に富む名著だと思う。でもめちゃくちゃ難解です。物好きにはおすすめ。

 

経済編

「『学力』の経済学」中室牧子

満足度☆☆☆☆★

【書評】筆者が主張していたのは、日本で普及していない「データを用いた教育政策提案」の必要性。子ども手当や少人数授業が、教育の収益率(ある教育を1年追加した場合の、教育を受けた子どもの将来の収入がどれだけ高くなるか)が低い政策だということが、他国の教育研究をもとにわかっているのにも関わらず、補助金や生徒一人に割く時間が学力を向上させるという「イメージにこだわった教育」が日本では行われている。その他、個別の家庭で、子どもの頑張りに対してご褒美をあげるべきかなど、データで教育法を考えていきたい人にはおすすめの一冊。

 

「人新世の『資本論』」斎藤幸平

満足度☆☆☆☆☆

【書評】資本は環境問題を考慮しない。「持続可能な開発」が掲げられているが、資本主義による経済成長を目指す限り、技術的・空間的・時間的にその負の遺産(資源の枯渇・貧困)は外部へと転嫁され(不可視化され)、気候変動および格差の拡大は止まらない。現在の二酸化炭素のほとんどは、先進国の富裕層が豊かな生活を続けるために排出されている。先進国に住んでいる自分たちが目をふさぎたくなるような現実を、データを交えながら議論してくれる一冊。「じゃあどうすればいいの?」となるが、そうなる人が増えることがまず第一歩なのかもしれない。

 

「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー

満足度☆☆☆☆★

【書評】一般的な経済学では、すべての人間は自分にとっての効用が最大となるように行動すると仮定している。すなわち人間は合理的な行動をとると仮定されている。しかし、実際の世界では人間は合理的には行動しない。ただ、この不合理さには実験で示されるような規則性があり、行動経済学はその規則性(人間の不合理さ)を解明する学問だ。自分の不合理さを認め、後悔しない経済活動を送るための理論を学ぶきっかけになるかもしれない一冊。

 

里山資本主義」藻谷浩介 NHK広島取材班

満足度☆☆☆☆☆

【書評】都市部において、お金を稼がないと生きていけないというのは事実であるが、それは都市部では食料やエネルギーを外部から買うしかないからである。それに対して里山では自分や仲間が作った農産物があり、薪を使うことで熱も作れ、林業とコラボすれば木質バイオマス発電で電気も得ることができる。すなわちやり方次第で食料とエネルギーの大部分を自分たちの管理下におけるということだ。「人新世の『資本論』」を読んで、じゃあどうすればいいの?と感じた自分だが、ここに一つの段階的な解決策があるのではないかと感じた。

 

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神マックス・ヴェーバー

満足度☆☆☆☆★

【書評】環境問題に興味を持ち、それを起こしてきた経済システムに興味を持った結果、そのシステムを作ってきた思想や宗教にたどり着いた。古代から「資本主義」自体は存在したが、人はいつから、「自分の生活に必要なぶんより金を稼ごうとする」ようになったのか。筆者は、資本主義の精神はむしろ、中世ヨーロッパの、営利だけを目的とした行動を倫理的に規制し、神への信仰を絶対視した地域から生まれたという逆説的な理論を展開する。これ、もともとドイツ語の論文で、一般向けに書かれてないのでめちゃくちゃ難解でハードル高いので注意です笑。読めるもんなら読んでみてください。

 

歴史・自伝編

「ゆげ塾の構造がわかる世界史」 ゆげひろのぶ 川本杏奈 野村岳司

満足度☆☆☆★★

【書評】世界史を学ぶことで、現在の諸国がなぜ今の姿になったのかを理解することができる。今後、小さな組織としてどう動くか、国としてどう動くかを考える上で、歴史をただ記憶するのではなく、その当事者の思惑や地理的条件といった「構造」を把握しておくことで、最適な選択につながると感じた。※マンガです。

 

「医者 井戸を掘る アフガン旱魃との戦い」中村哲

満足度☆☆☆★★

【書評】人々が目の前で飢えているという修羅場を見てきた著者の中村哲さんは、日本に一時帰国した際に、不幸そうな顔をしている日本人を見て、「こんなに物に溢れていて家族にいつでも会えるのに、何が不満でこんなに不幸そうな顔をしているのだろう」と思ってしまったらしい。正直、自分は日本に生まれて、勉強もスポーツもやりたいだけできて、大学院まで行かせてもらって、かなり環境に恵まれていると思う。傲慢かもしれないが、この環境で学んだことや得たことで、何か世界の平和に足りない部分を補うことができたらいいなと思う。そうすることが、育つ環境に恵まれた者の使命なのかもしれないなと、この本を読んで強く感じた。

 

リー・クアンユー回顧録 下巻」リー・クアンユー

満足度☆☆☆★★

【書評】シンガポールがイギリスや日本によって支配される時代を経て独立し、多民族の都市国家を築くまでの軌跡が書かれていた。独立直後のすぐに情勢が変わるような状況では、困難を頭で考え予想するというより、他の国の成功や失敗から学び、やってみてうまくいったことを採用するということを繰り返すことが大事だったようだ。それを実現するには、信頼できて理想をともにし、時には反対意見を述べてくれる部下が必要不可欠だったと述べられている。人口規模などは違うが、大国と深い関係を持つ、資源のない国として、日本との共通点も多く、学ぶことがあるかもしれない。札幌市中央図書館で、予約8人待ちとかで、上巻は13人待ちだったので先に下巻を読むことになりました笑。

 

自己啓発

「『Why型思考』が仕事を変える」細谷功

満足度☆☆☆★★

【書評】インターネット検索すれば、する方法(what)はすぐにわかる時代。そんな今こそ、なぜそれをするのか(why)を考えられる人が、深く汎用性の高い「考え方」を得られるのだと感じた。WhyなきWhat病、すなわち方法だけが先行し、なぜかわからずやっている状態だと、本質を見失うことがある。行うことが本質に対する答えになっているのかを、常に考えながら生きていきたいと考えさせられる一冊。

 

「不確実性超入門」田渕直也

満足度☆☆★★★

【書評】人間は進化の過程で、現象が起きた際の因果関係を瞬時に予測することで、生命を維持する能力を得てきた。しかし、複雑に絡みあった現代社会の多くの出来事は、ランダム性やカオスがもたらす「予測できない事象」であり、そこにあるのは特定の因果関係ではなく、結果の蓄積から得られる確率だけである。このような不確実性を持つ世界で生きていくうえで重要なのは、正確に予測することよりも、予測が外れた時(外れる前から)どう対処するかである。というお話。

 

「武器になる哲学」山口周

満足度☆☆☆☆★

【書評】現代人が抱える悩みは、ほとんど哲学者が一度は考えているのではないかと思う。答えのない問題だらけの生活で、希望をもたらすのは、行動の1つ1つに哲学を持つことなのかもしれない。

 

「プレゼンは『目線』で決まる」西脇資哲

満足度☆☆★★★

【書評】プレゼンの目的は、「相手に伝えること」ではなく、「相手を動かすこと」である。そのプレゼンによって相手に何をさせたいのかを決め、それをさせるために、スライド作りや話し方を工夫して「視線誘導」によって見てもらいたい箇所にきちんと注目させ、相手にしてほしい行動を提示していく。といった、「視線」に焦点を絞ってプレゼンを議論する一冊。

 

「決断力」橋下徹

満足度☆☆☆★★

【書評】政治では正解がわからない(後でわかる)ような問題に対して判断をしなければならない時がある。その時にリーダーにとって重要なのは、判断に対して部下や国民に納得してもらうことだ。しかし、納得してもらうために実体的な正義を求めていると迅速な判断ができず、手遅れになることがある。そこで、判断のプロセスに正当性を保証する「手続的正義」が決断の力になる。このプロセスの正当性の考え方は、全数検査をできない食品業界において、製造過程の安全性を保証するHACCPに似ているなと思った。

 

小説編

「三体」劉慈欣

満足度☆☆☆★★

【書評】地球以外の文明との接触は、地球文明を助ける希望となるか、絶滅へと追いやるトリガーとなるか。個人的には、この宇宙が本当に学校で習ったように広大なら、地球のような惑星は他にも存在するはずで、地球以外にも知的生命体も存在すると思っている。その知性が我々の科学(3次元+時間、光の速さで動くものはまだ作れていない等)を圧倒的に凌駕している場合、何が起こるのだろうか、ということを考えさせられる小説だった。微粒子のレベルでは、地球外知性による地球への侵略は、もう始まっているのかもしれない。その場合はもうどうしようもない気がするけどね😅

 

「マスカレード・ナイト」東野圭吾

満足度☆☆☆★★

【書評】このマスカレードシリーズは、人間の根源的な欲求と理性的な駆け引きを絡めるストーリーになっている印象。客が最高の体験をできるようにもてなす、ホテルという特殊な環境ならではのトリックが非常に面白かった。

 

竜馬がゆく(一)(二)」司馬遼太郎

満足度☆☆☆★★

【書評】300年続いた鎖国のなか、突然黒船が来港した当時の日本人の心境を想像すると、やっぱり恐ろしいなと思う。今だったら、火星から宇宙船が来るようなものだろうか。そんな激動の新時代には、旧体制に縛られない、大胆かつ冷静な竜馬のような人物が不可欠だったのだと思う。当時、形式化されてしまっていた武士道をただ守るのではなく、大小の社会をより良い方向に導くための自身の道理にかなった「自分の中での武士道」を持っていた竜馬から、大きなことをするにはどのようなマインドでいるべきかということが学べると感じた。幕府が絶対的存在で、反抗すれば命も危ない時代に、「より良い日本」を作るために幕府を倒そうと立ち上がった志士たちから、現代の我々にはないハングリー精神を感じる。竜馬が一生家族や藩の友人に会えない覚悟で脱藩(当時は重罪)し、国を動かすために旅立ったのが28歳。当時とは平均寿命が違うとはいえ、ほぼ自分と同世代の竜馬のような熱い気持ちを持って日々過ごせてるかと、自分に言い聞かせたい。

 

終わりに

書くのめっちゃ疲れました笑

今年も、自分も皆さんも良い本に出合えるように祈っております。

ではまた!

最後に振り返る用の目次です。↓